話し足りない、もっともっとお話ししたかったという気持ちと、
もう伝えることはない、最後までお給仕をやりきったという気持ちが共存しています。
ごきげんよう。夏組のアオイです。

ごきげんよう、とここでご挨拶するのも、これで最後です。
ようこそおいでくださいました、
お気をつけていってらっしゃいませ、と
あと何度言えるのでしょう…
私にとっても、旅人さまにとっても、
当たり前の毎日が、少し変わろうとしています。

旅人さまは今、どこで何をしていらっしゃるのでしょうか?
おうちでゆっくり温かいスープを飲みながら…
お仕事帰りの鉄道で、ガタンゴトンと軌道に揺られながら…(お疲れさまです。)
今よりずっと遠い未来に、ふと思い出して読み返してくださっている方もいらっしゃるかしら…
皆さまお一人お一人のことを思いながら、しっかりとしたためます。

以前もお話ししたことがありますが、私は昔から、人の話を聞くのが好きでした。
旅先でおの話、趣味のお話、美味しいもののお話、催しもののお話…
楽しい話をする方の目は、まさしく宝石のように輝いていて、
その目はどれだけ見ていても飽きませんでした。
原石が、シャッツキステでぱっと咲いて輝き宝石になる…
いつもその瞬間に立ち会えるのが本当に本当に大好きでした。

パーラーメイドになってから、いつも強く持論を主張してしまい、
先輩も後輩も困らせてしまったなと、今になって反省をしています。
メイドのみんな、ごめんなさい。
幼い頃から、反省はしても後悔はしないように過ごしてきたのですが、
やはり反省だけでなく、後悔もたくさんあります。
私自身、元は皆さまのように旅をしてきた者のひとりですが、
旅人は皆さまそれぞれ、単純に年月の深さだけでは測り知れない
シャッツキステへの愛があり、カルチャーへの興味があり、
この閉館への悔しさや悲しみがあるでしょう。
私も、もっともっと、この仲間で、シャッツキステで、お給仕を続けていたかった。
ここに記すことに少しためらいはありますが、
本音を言えば、今は悔しさで胸がいっぱいで、今にも溢れてしまいそうなのです…

最後の日誌にひとつ、
いくつも海を越えた先の遠くの国で古くから伝わる、好きな詩をご紹介します。
Lavender's blue, dilly, dilly, lavender's green,
When I am king, dilly, dilly, You shall be queen.
Who told you so, dilly, dilly, who told you so?
'Twas my own heart, dilly, dilly, that told me so.
この詩をふと思い出すと、自分が選択してきた決断とその結果に自信を持とうと、前を向くことができます。

これから自分の世界がどれだけ変わっても、いつも一握りの勇気と柔らかな優しさを持ち、
これから先の見えない未来も、よい航海ができることを信じて…

閉館へ向けて、いくらへにゃへにゃと悲しい気分で過ごしていても、
時間は私にも旅人さまにも、過去も未来も平等に、いつも通り進んでいきます。
よく食べ、よく眠り、これからの旅にそなえましょうね。
さようなら。
2020.11.12 (thu)
私設図書館シャッツキステ
夏組 アオイ
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