みなさまごきげんよう!ミツキです。
とうとう最後の日誌になってしまいました。
 
mitsuki2

何を書こうか迷っていましたが、せっかくなのでこれまでのお給仕を振り返りながら、思っていたことや感じていたことを素直に書いてみようと思います。
 

私が初めて当館の扉を開いた日からそろそろ2年が経ちます。
自分の好きなものを素直に好きだと言える場所を探し、たどり着いた場所がシャッツキステでした。
 
メアリーだった頃は、キッチンでお皿を拭きながら館内の様子を眺めるのが好きでした。
私もお話に混ざりたいなと思ったり、やっぱりうまくお話しできる自信がないから一生メアリーでいいかもと思ったり。(笑)
 

しばらく経った頃、ブローチが春組のピンク色に輝きました。
最初は緊張で中々自分から喋れなかったのですが、旅人様や他のメイドの助けもあり、だんだんお話できるようになっていきました。
 
ただ、ある質問にはずっと答えられずにいました。それは「ミツキさんは何メイドなんですか?」という質問です。
ピアノが上手なルナさんはピアノメイド、アロマに詳しいシオンさんはアロマ調合メイド。
…私は何メイドだろう?

イナズマイレブンの10年来のファンだから、イナズマイレブンメイド…?
「特定のアニメのタイトルを借りるのはちょっと…。」
…そうですよね。

プロフィール欄の特技に早口言葉って書いたから、早口言葉メイドはどうでしょう…?
「早口でご来館の案内とかするんですか?でも普段の語り口は結構ゆったりしてますよね?」
…それもそうですね。
結局肩書きが決まることはありませんでした。
 

変わった趣味もない。披露できる特技もない。
漫画やアニメ、ゲームは好きだけど、他にもそれが好きなメイドはたくさんいるので「アニメ・ゲーム好きメイド」とは名乗れない。
 
「他の人と違って私はこういう特徴があります!」と胸を張って言える個性って、ないなあ…と気付いたのでした。
 

ミツキの肩書き探しはその後より難航しました。
他のメイドは素敵なイラストを描いたり、美味しいお菓子を作ったり、美しい網目のコースターを作ったり、まるで魔法のように色々なものを作り出していました。
 
一方で私はなにも作り出すことができませんでした。
みんなができるコースター編みくらいは私も頑張ろうと、実はお家で特訓をしていました。
しかし右利きの説明書を見て左手で再現することがどうしても難しく、挫折してしまいました。
 
他の人と違う特徴を見つけるどころか、みんなができることすら私はできないことに気づきました。
 
私だけ魔法が使えない。他のメイドがその手から様々なものを生み出して色鮮やかに輝いているのに対し、ミツキはまるで無色透明でした。
 

パーラーメイドになってしばらく経ち悩んでいた頃、「日誌面白かったです。」と旅人様やメイドに声をかけていただくようになりました。
 
学び舎時代に出された宿題の日記は全て「今日は〇〇をしました。楽しかったです。」としか書いたことがない私。
これまで真面目に文章を書いたことがあまりなく、当然褒められた経験もなかったので、面白いという感想をいただけて大変驚きました。
 
綺麗な文章にしようと努めるよりも、思いついたままに文を書いた方が独特で良いと褒めていただけることが多くて、素直な自分の言葉を認めてもらえたようでとても嬉しかったです。
 
無色透明も同然だと思っていたミツキから微かな色を見つけて、「ミツキさんのこういうところが素敵ですよ。」と教えてくださった旅人様に、私はとても感謝しているのです。
旅人様の目に私の姿が確かに映っているという事実が嬉しかったです。
 
 
私がずっと悩み続けていた個性というものは、とても曖昧で脆い存在なのではないでしょうか。
「私は〇〇が好き!」と言っても、自分より詳しい人がいるかもしれないし、「私は〇〇が得意!」と言っても自分より上手な人はきっとたくさんいるし。
「私は〇〇な性格です!」といっても、もっとその要素が強烈な人はおそらくいますよね。
 
上を見上げたり周りを見渡したり、他人と比べだしたらキリがないこの世界で、個性はどのようにして存在しているのか。
館内で旅人様やメイドと接していく中で、自分の中で一つの答えを導き出せたような気がしました。
 
個性とは、相対的ではなく絶対的な存在として自分という存在を認識してくれる他者に見出してもらう、または認めてもらうものではないか。

「でも何事にも上には上がいますよね。」などど否定せず、「こういうところがあなたの良いところですね。」「あなたのそういう部分が個性的ですよね。」と優しく肯定してくださる旅人様の温かい言葉を通して、私はミツキのミツキらしさをなんとなく感じることができていたように思います。


おかげさまで今では文章を書くことが好きになりました。
ミツキの切り口や言い回しが面白いとおっしゃっていただいたおかげで、以前よりも素直に思い切って言葉を紡ぐことができるようになりました。

他のメイドのように何かを作り出すことはできないけれど、旅人様が楽しんで読むことができる文章を書けるように頑張ろうと、前向きな気持ちで日誌を綴るようになったのでした。


中盤少し暗い話になってしまいましたが、私が旅人様に救われていたということをどうしてもお話ししたかったので、書かせていただきました。
 


最後になりますが、旅人のみなさまへ。
先月の日誌にも旅人様への感謝を綴りましたが、全然言い足りなかったので今月もお話しさせていただきました。

好きなものに目一杯愛を注ぐことの素晴らしさ、今を全力で生きる姿勢、人の良いところを見つける力、みなさまからはたくさんのことを学ばせていただきました。
 
みなさまとシャッツキステで過ごした日々は私にとっての宝物です。
旅人様に宝物のような時間を提供すべくお給仕に励むのが私の役割なのに、むしろみなさまからたくさんの宝物を頂いてしまいましたね。
 みなさまからいただいた宝物を、今度は私が誰かにお裾分けできる人間になれるように頑張ります。

私に沢山の宝物をくださったみなさまのこれからの旅路も、どうか素晴らしいものでありますように。
それではまたどこかでお会いしましょう。

ミツキでした。