親愛なる旅人のみなさま

ごきげんよう、冬組のカナタです。
kanata

あたたかいスープが美味しい季節になりました!
今年チャレンジしたいのは牡蠣のポタージュです。

あっという間に、日誌も最後のページとなってしまいました。
今日はこの場を借りて、みなさまへの感謝の気持ちを残しておこうかと思っています。

みなさまは初めてこの図書館の扉を開けた日のことを覚えていますか?
緊張でドキドキしながら、それともたまたま見つけた扉をなんとなく開けてみたのでしょうか。
その扉の先にはどんなメイドがいましたか?今までにどの席に座って、どんな時間を過ごしたのでしょうか。

旅人さまと同様にメイドたちにも「お給仕のために」初めて扉を開けた日があり、きっとどのメイドもその日のことを覚えていると思います。
私がお給仕のために初めて扉を開けた時は、メイド長のエリスさんが出迎えてくれて、館内ではノバラさん、シオンさんとライゼさんが開館の準備をしていました。
それからたくさんの先輩メイドとお給仕をして、後輩メイドもたくさん増えて、気付いたらパーラーメイド歴は全メイド中真ん中くらい。本当にあっという間でした。

今館内でお給仕しているメイドは、私も含めて14年の図書館の歴史の中では後輩の世代にあたります。
だからこそ、みんなそれぞれに「憧れのメイド」や「理想のメイド」としての先輩メイドが少なからずいるのではないかと思っています。

私の憧れのメイドは、ミソノさんです。
初めて一緒にお給仕した時のことは一生忘れないだろうと思いますし、「いつかあんなメイドになりたいな」と日々思っていました。あたたかくて博識で、お話するとワクワクして。ミソノさんとお給仕した日は館内がいつもと違う景色に見えたので、いつか私も旅人さまにそんな体験を届けられるような、図書館らしいメイドになりたいと思っていました。

ただ、今になって「いつかなりたいな」ではなくて「なるために今どうするか」を日々考えなくてはいかなかったのだなと反省しています。(本当に思っているのに、文章にすると急に意識が高くなってしまいますね)
旅人さまが束の間の休息をしたり、はたまた新しい知識や経験を持ち寄ったり、思い思いの過ごし方をそっと支えるメイドに。理想の図書館を支えるメイドになるためには、「いつかなれたらな」なんていう気持ちではダメだったのだと思います。
正直に言うと、私は自分が求める理想のメイドにはなれませんでした。
たおやかで落ち着いていて博識で慈愛に満ちて、、、あげたらキリがありませんが、他のメイドが持っている様々な要素に日々憧れ続け、そのくせ旅人さまとお話すると楽しくて、理想を忘れてついつい「100%カナタ」の姿になってしまいました。
初めてお会いした旅人さまも、いつもの席に座る旅人さまも、みなさまが色々なことを教えてくれて、お給仕のたびに新鮮で楽しい気持ちに満ち溢れてしまいました。
旅人さまが主役の図書館なのに、新鮮で楽しい気持ちを旅人さまに提供するべきなのに。ダメダメですね。

きっと私のお給仕は、旅人さまの理想の図書館メイドと違う姿だったと思います。誰より私がそう思っています。

メイドとしての佇まいも、すらりと美しい所作で眺めていたくなるような理想のメイドにはなれませんでした。
メアリー時代からキッチンで大きな音を出して、先輩メイドに笑いながら「しーっ!」と人差し指を立てられてしまったたこと。
館内の通路で「失礼します!」と大きな声で言いながら全然失礼せず、通路の奥にいるシズクさんに突進していったこと。
 焼き立てスコーンのご案内を間違えてしまい、館内の旅人さまとお給仕中のノバラさんを困らせてしまったこと。
時間の計算が苦手で、旅人さまに何度も助けていただいたこと。
ミツキさんとボードゲームの勉強をするはずが、ゲームに夢中になってお給仕を忘れてしまったこと。
久しぶりに会ったムギさんに「愛が欲しい」と泣きついたこと。(文章にすると怖いですね)
 
改めて思い出すと理想からは程遠く申し訳ない気持ちばかりが募りますが、
それでも館内で会うたびに楽しくお話をしてくださり、優しい笑顔をくれた旅人のみなさまがいました。
優しく見守ってくれた先輩メイドたち、「しっかりしてくださいよ〜!」とかわいく励ましてくれた後輩メイドたち、そして初めて扉を開いた時迎え入れてくれた総メイド長のエリスさん。
みなさまのおかげで、こうしてメイドを続けられているんだと思います。
本当に、本当にありがとうございました。

私はみなさまに何かを届けられたでしょうか。みなさまの図書館の思い出のなかで、少しでも良いことを残せていたでしょうか。自信はありません。どうしてもっと理想のメイドになるための努力をしなかったのか、良い時間を過ごしてもらうために頑張れなかったのかと考える日々です。
 
私は旅人さまからもらってばかりで何も差し出すことができず、お給仕すら満足にできないようなダメダメダメダメメイドでしたが、ここにいていいよと受け入れてくださったこと、感謝してもしきれません。
本当に本当に、本当にありがとうございました。

私が憧れてやまなかった図書館は、今までのたくさんの先輩メイドたちと、訪れてくださった全ての旅人さまが作り上げてくれました。
こんなにあたたかくて素敵な場所を作ってくださったこと、本当にありがとうございます。みなさまもこの場所も、私の永遠の憧れです。
そしてそんな図書館を守るために日々真摯にお給仕をしているメイドのみなさん。同じメイドなのになかなか力になれないことばかりでしたが、尊敬するところばかりの素晴らしいみなさんとお給仕できたこと、お給仕の日々ひとつひとつが私の宝物です。本当に本当に、ありがとうございます。


私が旅人さまだったらどんな風に館内で過ごしたいか。

ルナさんに優しくお話を聞いてもらって、ノバラさんのきれいなボブをただぼーっと眺めて、ライゼさんに詩を読んでもらって、ツバキさんが黙々とキッチンに立つ姿を眺めて、シズクさんの声に癒されて、シオンさんが誰かにいたずらしているところを見て紅茶を一口、アオイさんに声をかけてもらって、ミツキさんのおとぼけ話を聞き、ムギさんが撮った写真を見せてもらいたい、ヤナギさんの編み物姿を見たり、小さなリツさんが動き回る姿を眺めたりして、ツグミさんが黒板を描きながら一緒に話しているココさんの髪が揺れているなあと思いながら、オトハさんの作ったケーキを解説を聞きながら食べたいです。
そんな日々を永遠に過ごしたいのですが、どうやらそろそろ、各々の旅路が別れるようで。

それまであったものが過去のものになること、手が届かないものになることがどうしても耐えられない気持ちになる時もあります。それでも、新しい何かとの出会いはもっと素晴らしいと教えてくださったのは旅人さまでした。

だからこそ、私はこれからも扉を開け続けますし、
旅人さまのこれからの旅路でも、どうか恐れずにどんどん扉を開けて欲しいなと思っています。
それは旅人さまにとって第二の図書館になるかもしれませんし、かけがえのない誰かとの出会いに繋がっているかもしれません。
たまたま開いた扉が、どこかでこっそり開館していたシャッツキステに繋がっていることもあるかもしれません。
その時に理想のメイドの姿になりみなさんを驚かすことができるよう、日々頑張る所存です!

図書館の扉は閉まりますが、扉のこちら側では変わらず誰かがシャッツキステでお菓子を焼いて、蔵書の整理をして、編み物をしています。
旅の途中で偶然扉が繋がることを願っています。

みなさまの心の中にあるシャッツキステが、できるだけ大きくて明るい光を燈していますように!

それではみなさま、引き続き良い旅を!
最後はいつものお見送りの言葉で。

「お気をつけて行ってらっしゃいませ!」

カナタより。